おかもと まきこ
月ヨガだより №28

生きとし生けるもの
すべて至福より生まれ
至福にささえられ
そして至福へと向かい
ふたたび至福とひとつになる
〜 ウパニシャッド
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俺は大地の果てまで出かけてみた
俺は水の涸れ果てるところまで出かけてみた
俺は空がおしまいになるところまで出かけてみた
俺は山のつきるところまで出かけてみた
そして、俺は自分の友でないものなど、ひとつも見かけなかった
伝承歌 ナヴァホ族 〜若い戦いの神の歌
ネイティブ・アメリカン
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すべての生命はワカン(グレート・スピリット)だ
そして風や漂う雲のように
動きの中で力を顕示するもののすべてと
道端の丸石のように
じっと動かないもののすべてもまた
ワカンなのである
なんの変哲もない棒切れや石でさえ
霊的な性質をもっている
宇宙を満たし
いたるところに拡がっている神秘的な力のあらわれとして
その霊的な本質は尊敬に値する
フランシス・ラフレスチェ オセージ族
ネイティブ・アメリカン
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「物質」よりなる自己が存在し
その奥に
「生気」よりなるいま一つの自己が存在し
その奥に
「精神」よりなるいま一つの内なる自己が存在し
その奥に
「真理=知識」よりなるいま一つの内なる自己が存在し
その奥に
「至福」よりなるいま一つの内なる自己が存在する
タイッティリーヤ・ウパニシャッド
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真我とは万所偏在の存在であるが
身体内に宿ると自身の触覚器官内に制限されてしまう
それ故に真我はすべての感覚を知覚できなくなり
すべての生き物の身体にかかわれなくなるのである
チャラカ本集 79節
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万生の内に秘れる真我は自らをあらわさず
ただ、鋭く精妙な理智を有する観想者のみによって
見出されるのだ
カタ・ウパニシャッド 12節
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すべてのものはひとつである
あらゆる存在と宇宙原理との一体化を説く
<不二一元論>を
ご存知ですか?
四千年以上前から伝承される
古代インド哲学の主流
ヴェーダーンタ学派の宇宙観です
実践を通して心身統一をめざすヨガ哲学にも
数千年を経て
その宇宙観が引き継がれてきました
自分とは何だろう?
自分はどこから来て、どこへ行くんだろう?
ヨガや瞑想で自己客観視力が身についてくると
自己存在について
深く考えるようになっていきます
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わたしの場合
西洋の善悪二元論や個人主義が染みついていたので
外の世界でうまくいかないことがあると
孤独感
疎外感
自己否定感
むなしさ
そんなものに心乱されて
大波にのみこまれ溺れかけることが
よくありました
こころの最深部
自己存在の弱さに気づいたのは
数年におよぶ瞑想のはて
<すべてはひとつ>
という宇宙観に出会い
万物に神が宿り、すべてはつながっている
という感覚を思い出し
原点回帰することができました
「思い出し」というのは
子どもの頃にはその感覚を持っていたからです
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ネイティブ・アメリカンの世界観と
古代インドのヴェーダの智慧があまりに似ていることに気づき
その不思議なつながりにも胸おどります
<不二一元論>はかつて神秘主義と呼ばれましたが
風の時代(水瓶座の時代)のいま
あらゆる宗教や国家、地域の枠を超えて
直観的にこの宇宙観を取り入れる方が
とても増えているような気がしますね
<真理はひとつ、至る道はあまた>
まさに時代はエキュメニズム
エキュメニズムとは
あらゆる宗教を
<一つの根より発し、同じ目標をめざすもの>
とみなす立場のこと
キリスト教(カトリック)を信仰するクライアントさんから
こんな人もいますよ、と
教えてもらったのが
アッシジの聖フランチェスコ
という中世イタリアの修道士
あらゆる生き物を愛し尊び
愛と平和を求めたフランチェスコは
被造物の賛歌
太陽の賛歌
平和への祈り
などを遺しました
西洋人には珍しく自然と一体化した聖人として
いまだに世界中から敬慕される存在
その生き方、信仰心からは
万物に宿る<至福>をうたった
古代インドのヴェーダ讃歌との
深い共鳴がみられます
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ヨガセラピーにも<至福のポーズ>がありますが
この<至福>が
自分の内にあることに気がつくと
自己感覚が力強いものに変化していきます
<至福>とは
アーユルヴェーダやインド哲学で
なんの乱れもにごりもない
静けさ、安らかさ、調和
純粋で完璧な状態のことを言います
わたしたちのこころの最深部は
<純粋意識(プルシャ、ブラフマン、至高の存在、真我)>と
つながっているとされます
純粋意識とは
宇宙にあるすべてのものを生み出し育んでいる
大いなる力、大いなる存在、宇宙原理、生命原理
この純粋意識のもつ質が
<至福>なのです
わたしたちは内部に至福を抱きながら
普段はおおい隠されている状態です
ヨガや瞑想によってめざすゴールは
その覆いを取り去って
至福を思い出し、感じ
心身の全体に染みわたらせて
自分の外部=世界にまで
至福を広げる存在になっていくこと
これがいのちの最終目標と言われます
そのときあなたは
心身ともに健やかに
自分らしさを輝かせながら
他の生命に貢献できる自由で幸せな人生を
歩んでいるはずです
最後まで読んでくださり
ありがとうございました
◇参考文献
「それでもあなたの道を行け」より引用
ジョセフ・ブルチャック編、めるくまーる発行
◇「神の生命 霊的進化の哲学」より引用
シュリー・オーロビンド著、文化書房博文社