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執筆者の写真おかもと まきこ

月ヨガだより №26



動乱の時代に

人々を元気づける話をしてほしい


女神シャクティの願いに

シヴァ神が語ったとされる

シーターとラーマの物語


今回は

マハーバーラタとならぶ

古代インドの二大叙事詩の一つ

ラーマーヤナより


混迷の時代を生きる私たちの心を

数千年の時を経て勇気づけてくれる

ラーマ王子の言葉をあなたへ


…………………………


物語の舞台は

古代インド、後期ヴェーダ時代

北インドのコーサラ国の王子ラーマと妻シーターが

絶えず変転する苦難をともにしながら

最善を尽くそうと生き抜いた軌跡です


この時代は

民を守るべき王(為政者)たちが

規則を守らず、個人的な欲望に走って

モラルが乱れた時代だったようです


パラシュラーマという男が世界中を回って

ふさわしくない支配者を次々に斧で殺し

規則への服従を敷いていたところ


若者だったラーマ王子が

パラシュラーマに冷静で鋭い反論をなげかけます


「激しい怒りを克服できず

罰を繰り返すことで

完璧な世界を想像できることを願って

何世代にもわたって

氏族の王を次々に殺し続けるのは

どのような心なのですか?」


空気が張りつめ

周囲の者は呼吸すらできなかった


「制御は悪だというのか?」


「制御は飼いならされた動物を生み出します

社会の目的は人類を鼓舞することであり

飼いならすことではありません」


「では何が文化を創造するのだ?

規則がなければ強者が弱者を支配し

だれも無力なものを助けないのだぞ」


「規則を用いて

人に思いやりを持つように強いることはできません

そんなことをしても、恐怖を増大させるだけです

文化のそもそもの目的は

恐怖を乗り超えて

強奪や支配や威圧したりする必要を

感じさせないようにすることです」


ラーマの言葉に納得したパラシュラーマは

「幸せな社会を築くためには

規則は自発的に従われねばならないことを

私に理解させてくれ」と

ヴィシュヌの弓で自分の心の限界を射抜くよう頼み

ラーマの矢によって

精神的な的を貫かれました


「私は今後、殺したり脅して善良にさせたりはしない

なぜなら今は

どうしたら善良になれるかを示してくれる者がいるからだ

私の務めは終わった」

と永久に暴力を放棄し

世の中から退いたというエピソード


制限によって人の内なるパワーを奪うのか?

信頼によって内なるパワーを引き出すのか?


<文明の目的とは何か>という

現代社会にもつながる深いテーマが

古代の物語で語られていることに

心が揺さぶられませんか


…………………………


紆余曲折を経て王位に就いたラーマは

民の模範となって規則を守る善良な王となり

魔王にさらわれた妻のシーターを

ラーマが奪還するという冒険で

物語はクライマックスを迎えますが


最終章はとても哀しい結末を迎えます


民から貞節を疑われたシーターを

ラーマは都から追放せざるを得ず

シーターは最後に自ら大地へ帰り

ラーマは川に身を沈めてシーターの後を追いました


年末からずっと

この大叙事詩にどっぷりつかってきましたが

この物語は


規則と自由

恐怖と信頼

思考と自然

精神と物質の関係性

文化と大地の調和のあり方とは…


そんな奥深いテーマを投げかけながら


内なるパワーを見失った現代人の魂に向かって

<おかれた場にあって最善を尽くせ>

と勇気づけているように思われてなりません


ラーマーヤナは

次の大叙事詩マハーバーラタへ

そしてバガヴァッド・ギーター(神の詩)へと

つながっていきます


果てしなく続く循環

創造、維持、破壊の無限のサイクルの中で

文化に圧倒されず、自然を恐れもしない

ラーマとシーターの生き方が

わたしたちの魂に訴えかけているもの


思考や言葉だけではつかみきれない

壮大な世界観と寂静と智慧を

あなたも感じてみませんか


最後まで読んでくださり

ありがとうございました


◇参考文献より引用

インド神話物語 ラーマーヤナ Sita 上・下

デーヴァダッタ・パトナーヤク著、原書房発行

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