ことばは沈黙に
光は闇に
生は死の中にこそあるものなれ
飛翔せるタカの
虚空にこそ輝けるごとくに
エアの創造
〜ゲド戦記
<過去をふりかえる苦しさ>
について
ヨガの生徒さんから
相談を受けることが続いたので
今年最後のテーマは
<二極の対立>
両極に対立する価値観
相反する二つの極
引き合う力と反発する力
この世を支配する<二元性>という
巨大なパワーについて
みなさんと一緒に
思いを馳せてみたいと思います
光と闇
生と死
言葉と沈黙
陽と陰
善と悪
賞賛と軽蔑
愛着と嫌悪
ヨガの世界では
このような、二つに引きさかれる考え方を
<二極の対立><二元性>などと呼びます
磁石や電気に
<引き合う力/引力>と
<反発し合う力/斥力>が働くように
人間の心も
二つの相反する価値観でせめぎ合う法則に
支配されています
まずはこの法則に気づくことが
その苦しみから脱する第一歩
ヨガは
自分自身の心に気づき、制御し
この<二極の対立>を超える意識状態をめざしますが
それはとても困難な作業で
大変な精神力を必要とするので
あらゆるヨギー、ヨギーニたちの
一生をかけた目標
と言っても過言ではないかもしれません
ヨガセラピーで
呼吸法を駆使しながら
肉体への刺激と解放を繰り返し
脳の深部領域の自律神経系へアプローチして
<身体と心の状態に気づく力>を
身につけていくと
今まで気づかなかった
自分自身の思考や感情を観察しつつ
過去の自分のことも
思い出していく方がいらっしゃいます
どんな心でこの世界と向き合い
どんな態度で物事や人と関わってきたか
ヨガで研ぎ澄まされた鋭い感性で
真摯に過去に向き合ったとき
昔の自分に落ち込み
<耐えられない>
と苦しむ場合があります
人に迷惑をかけてきた自分
人を傷つけてきた自分
自分のことしか考えていなかった利己心
すべてを否定的にとらえていた心の眼
闇の中を歩いていた自分
人との関係性に変化が生じる方もいます
今まで親密にしてきた人に違和感を覚えたり
同じ価値観で生きてきた人に葛藤を感じたり
そんな苦しさを感じているあなたへ
その葛藤こそ
あなたが前へ進んでいる証拠
正しい方向性へ進んでいるあかしです
この世の欲望におぼれて
暗闇の中を歩いている人間に<苦しみ>は見えません
闇を進む人は
この世の<真実>を知りたいとも思いません
あなたの心にぼんやりとした光がさしたからこそ
闇の存在に気づき、苦しみながら
光へ向かって歩き出しているのです
陰の中から陽が生まれ
光は闇の中にこそ輝くもの
汚い泥水の中にこそ
美しいハスの花が咲く
汚水は人間社会
ハスは
苦しみから生まれた清らかな人間の心を
象徴しています
闇や陰の経験から
光や陽が生まれる
これが宇宙の真理です
自分の内にひそむ<闇>を
それほど恐れる必要はありません
嫌悪することもありません
光を知るために
闇は必要だったのです
わたしたちの心の無意識の領域に
広大な闇が存在すること
肯定的なものと同時に
否定的なものもたくさんあることを
ただあるがままに受け入れればいいのです
その存在に気づき、受容し
ただよわせておく
そして
自分の意識を
その否定的なものに過剰にフォーカスしなければ
その存在にエネルギーを与えなければ
その否定的な存在があなたを支配することはできません
あなたが支配するのです
あなたの内に存在する
あらゆる可能性
無限の潜在力を
あなた自身と統合・融合してゆく
それが二極を超えるということ
悪を捨て善だけをめざすのではなく
善悪を超える境地をめざすのが
ヨガや瞑想の目標
これは思考や知性だけでは到達できない境地です
有効な武器は
◇呼吸法によって自律神経を調整する<プラーナヤーマ>
◇肉体を使って自律神経を調整する<アーサナ>
「アーサナにおいて、相反して対となるものに攻撃を受けることがなくなる」
「アーサナが成し遂げられたならば、プラーナヤーマ(呼吸法)を実践する。プラーナヤーマとは、吸気と呼気を通して動揺を取り除くものである」
ヨーガ・スートラ 2章48、49節
ヨガは呼吸の科学、心の科学です
闇を手探りで歩きながら
ぼんやりとした光を求めて歩き出したあなたに
智慧と勇気と力強い技法を与えてくれます
特にナーディ・シュッディは
あなたを二元性という混乱や苦しみから救い
あなたの本質へ
自己の中心にある<安らかさ>に
引き戻してくれるでしょう
今年最後の瞑想は
ナーディ・シュッディで心の波を静めて
自分の<闇>をおそれずに
あらゆる闇や光を受け入れ
それを超えて
二元性を手放してみませんか
最後まで読んでくださり
ありがとうございました
温かいご縁とつながりに深く感謝しつつ
来年もどうぞよろしくお願いいたします
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