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執筆者の写真おかもと まきこ

月ヨガだより №19




自分自身の<不完全性>を受容することほど

人を成長させるものはないかもしれません


わたしたちは

過ちを犯すからこそ

他者の過ちを赦すことができ

寛容になれる


完璧でないからこそ

他者の弱さに共感できる



人間は神の似姿に創られながら

肉体と自我意識を持つが故に

<不完全性>を内に秘めた存在です


それでも欲望や利己心を超えて

慈愛や調和の境地へとたどりつきたい

生きている限り

自我を離れて魂と共感へ向かう生き方へ

懸命に努力し続けるのもまた人間



完璧性からほど遠く

哀しくも切ない弱さや悲劇性を身にまとう存在


それが神を惹きつけてやまない

<人間>の魅力なのではないでしょうか



争いを好まず

<彼を憎む敵のいない者>と賞賛された

ダルマ(正しき法/徳)神の息子

徳高き王子ユディシュティラですが

彼には博打好きという弱点がありました


骰子賭博で王国や妻までも賭けて失い

13年間の追放を味わったユディシュティラは

自らの<不完全性>を味わい

その苦しみに耐え抜く人生を歩みます


そして最後に


<不完全性を受容して王となる>


自らの運命に立ち向かう決断をするのです


 …………………………


自己の義務(ダルマ)の遂行は

不完全でも

よく遂行された他者の義務に勝る

自己の義務に死ぬことは幸せである

他者の義務を行うことは危険である

    〜バガヴァッド・ギーター(神のうた)3章35節


…………………………


自分の人生で与えられた課題、役割、為すべこと

そんな自分の運命に気づき

たとえ不完全でも、為しうることを為す

結果は神(宇宙)にゆだね

最善を尽くして運命に立ち向かう


ギーターは

この複雑な世界にあって心安らかに生きられるように

人間に<行為の秘訣><生き方の道標>を示し

暗闇を照らす光のように

わたしたちを勇気づけています


…………………………


古代インド

王家を二分する大戦争のすえ

死屍累々たる遺体と嘆きにおおわれる中

ユディシュティラは王位への関心を完全に喪失しました。

「わたしは人殺しだ」

「すべては一体、何のためだったのか」

と嘆き

「わたしは隠者になるべきだ」

と退こうとしたとき


神の化身クリシュナが

運命に立ち向かうよう勇気づけます



隠者とは、自分のために異議を探究する者だ

しかし、この世の誰もが

意義を見つけられる世の中を作れる者は、王しかいない

王位を選びなさい

義務感からではなく

世の人々を思いやる気持ちから

王になりなさい


あなた以上の適任者がいるだろうか

博打で王国を失ったあなたは

人間の不完全性に共感できる


13年間の追放を耐え忍んだあなたは

後悔と寛容の力を知っている


あなただけが均衡の取れた世界を

頭脳と心

富と智慧

秩序と同情の均衡の取れた世界を

築く力を持っているのだ



ついに王となる意味を理解したユディシュティラは

戴冠を受け入れ

彼の治世は平和で繁栄した時代となったそうです


この神話から感じるのは


<本物の強さは不完全性から生まれる>


という真理です


自分自身の不完全性を直視し

しかも投げやりにならず

粘り強く忍耐し続けたことが

彼を謙虚にし

他者への共感と寛容の心を育み

秩序と同情の均衡を読みとる智慧を

さずけたのではないでしょうか


マハーバーラタには多くの英雄が登場しますが

ユディシュティラの魅力は

<弱さ>を通して花開いた

本当の強さ、優しさ、豊かさでした


そして彼の治世が終わるころ

世界はカリ・ユガ(暗黒時代)の到来を迎えます


人間が寛容の精神を欠く時代

人々は利己心をふくらませ

獲得して貯め込むためだけに生きるようになり

パーンダヴァ兄弟も傲慢になって

ユディシュティラだけが粘り強く固守した

4分の1のダルマ(徳)が

その後の宇宙期を支えているといわれます


わたしやあなたの内にある


忍耐、やさしさ

他者を思う慈愛の心、強さは


ユディシュティラから受け継いだもの


その目に見えないダルマ(徳)のエネルギーが

世界の調和を支えています


最後まで読んでくださり

ありがとうございました

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