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  • おかもと まきこ

月ヨガだより №17


太陽神スーリヤの息子

      カルナの悲劇

プライドが、弱さを生んだ


ハッピーエンドと悲劇

あなたはどちらがお好みですか?


今回のテーマは、プライド


一年の煩悩を振り返る年末も近いので

プライドという煩悩について

インド神話の世界を旅しながら

思いを馳せてみませんか?


古代インドの大叙事詩

マハーバーラタには


カルナという

慈悲深く勇敢で、魅力的な英雄が

登場します


彼の生涯には


個人的野心か 共感か

友人か 家族か

チャンスをつかむか 誠実を貫くか


そんな葛藤が散りばめられ


敵だらけの世界に自分の居場所を求めて

孤軍奮闘する悲劇の英雄として

異彩を放つ存在


不思議ですね

順風満帆の物語より

カルナのような悲劇性に

人は心を揺さぶられます


とくに彼の生きざまは

ヨガの主要テーマである<煩悩>について

考えさせてくれるので

今回のテーマとしました


「煩悩とは、無智、自我意識、愛着、嫌悪、そして死への恐怖である」

                ヨーガ・スートラ 2章3節


誰の心にもひそむ


<自我意識>

<自尊心>

<プライド>


これが時によって

いかにわたしたちを惑わし、足元をすくい

弱く、もろくするか…


カルナの物語は

現代に生きるわたしたちに

高いプライドの怖さを伝えてくれます


彼は本来なら

主役であるパーンダヴァ王家5兄弟の兄でありながら

母が彼を未婚で生んだことを恥じ

生後すぐ川に流して捨て

彼を拾いあげた夫婦によって育てられました


育ての父が<御者>であったため

カルナは自身が王家の血筋であることを知らず

クシャトリヤ(戦士)という出自も知らぬまま

当時低い身分とされた<御者の子>として育ちます


しかしカルナは戦士を志し

武芸に励み

さまざまな障害を乗り越えて

優れた弓の使い手に


そして

王家を二分する大戦争の際

敵対するカウラヴァ軍の戦士として

弟たちと真っ向から戦い合うことになるのです


太陽のように真っすぐで

公正で、だれよりも慈悲深い人柄が

彼の魅力


彼の慈悲深さを伝える逸話を紹介すると…


ある雨の日

息子を火葬しなければならない男性に薪を提供するために

自分の家を取り壊した


牛乳の入った器を地面に落として泣いている幼い少女を

慰めてやりたくて、牛乳が染みこんだ土を絞り

器に戻してやった


死の直前、金をめぐんでほしいと近づいたバラモンに

瀕死のカルナは自分の顎を砕いて歯を与え

自分の歯には金が被せてあるからといった


しかし

そんなカルナの致命傷となったのが

<プライド>でした


育ての父の職業・御者を否定して

戦士となったカルナは

ひそかに出自を恥じていたので

自らの戦車の御者を選ぶとき

王たる身分の人物がついて喜ぶのですが

自尊心を満足させることを優先したその人選が

闘いのさなかに命運を分けます


弟アルジュナとの勝負をかけた決戦

車輪が地面のくぼみにはまって動かなくなったとき

御者を務める王に

「くぼみから外してほしい」と頼みましたが

「王たる自分にそんな雑役はできない」と断られ

危機のさなかに戦車を降りて

自分で車輪を立て直すしかありませんでした


これが命取りとなって

アルジュナの放った矢に胸を貫かれて

カルナは命を落とします


自我を喜ばすために下した決断が

偉大な英雄の命取りとなった


賢い勇者の目を曇らせ

判断を誤らせたのは

劣等感を覆い隠そうとする

プライドでした


マハーバーラタには

クリシュナという神の化身が登場しますが

クリシュナが戦士として戦わず

アルジュナの<御者>として

誠心誠意その務めを果たしたのと対照的です


自我意識に負けたカルナ

自我意識を超え、超然と行動し続けたクリシュナ


マハーバーラタは

人の世の苦しみ、はかなさ

<寂静>にいろどられた壮大な物語


人間同士のエゴがぶつかりあう争いの先に

勝者はいないこと

本当の闘いは一人一人の内面世界に繰り広げられる

<利己心>と<共感>のせめぎ合いにあること


そんな普遍的な真理を

数千年の時を超えて

現代に生きる私たちに訴えかけています


最後までお読みいただき

ありがとうございました


※参考文献

「インド神話物語 マハーバーラタ 上・下」(デーヴァダッタ・パトナーヤク著、原書房)

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