奇跡と愛のホルモンと言われるオキシトシン、第2話です。私のなかで、かなりブームになってますね(笑)。
不安の軽減、疼痛の緩和(強力な抗炎症作用)、認知機能の改善、血圧の調整、摂食欲求の抑制、筋力の強化。
オキシトシンには、現代人を苦しみやストレスから解放し、希望をもたらしてくれる様々な具体的効果があります。
日本ヨーガ療法学会沖縄大会の海外講演、
「ポリヴェーガル(多重迷走神経)理論」で有名なステファン・W・ポージャス博士と、その妻で、オキシトシンと社会的行動との関係を発見したC・スー・カーター博士、偉大な科学者のダブル講演より、再びオキシトシンについてみなさんへ。
人間は、恐怖や不安状態におかれると攻撃性が増し、安心できる穏やかな環境では落ちつきます。
こうした<社会的認知>の背景に、実は人間の体内のホルモンや自律神経が、大きく関わっていることが最新の科学的知見で分かってきました。
ポージャス博士は、人の認知を生理学的に測定することを研究し、自律神経を司る最も古い脳である<脳幹に出会い>ました。オキシトシンは、人の迷走神経を調節して自律神経に作用します。
前回の投稿で紹介したので詳細は省きますが、
進化的に古いホルモンであるバソプレッシンが孤独や防御、縄張り意識、攻撃性を誘発するのに対し、新しいホルモンであるオキシトシンは、人と人をポジティブに結び付け、安心と社会的絆を感じさせ、癒しと回復を促します。この二つは兄弟ホルモンとよばれ、拮抗して働きます。
強い恐怖状態や慢性的なストレス下に置かれると、バソプレッシンが優位になり、自律神経がその環境に<適応>した結果、生理的な緊張状態が強まってしまうことがあります。そんな状態が続くと、人の心身は消耗し、脆弱になり、さまざまな不調和が生じてきます。
では、どうしたら、オキシトシンの効果を最大限に発揮できるのでしょうか?
その決め手は、自律神経を司る脳幹へ、<安心>という社会的関与のメッセージを送れるか、そこにかかっているそうです。
さまざまなアプローチ法が考えられますが、ポージャス博士は具体的に、呼吸法、声音、表情、仕草などによって、安全な社会的関与のメッセージを脳幹に送れるか。それが決め手と話していました。
博士は2013年にインドで行われた研究を紹介し、若い精神疾患の男性にヨガを施したところ、1ヵ月後にはオキシトシンの血中濃度が6〜8倍に増加したという驚きの結果を報告し、ヨガセラピーがその有効な手段の一つになり得ると指摘して下さいました。
人間の神経系は、<安全を感じる環境>でこそ、最高の機能を発揮できるそうですが、私が一番印象に残ったのは、妻のカーター博士が<安全な環境>について、<競争のない>という言葉を繰り返し使っていたことです。
人と比べず、競争せず、縄張り意識を持たず、調和と絆、安心で繋がること。
そんな状態にあってこそ、人はその生理機能を最大限に発揮し、社会に貢献できるのです。
そういう意味で、今の社会を改めて振り返り、幼少期から比較と競争にまみれた社会で、強いストレスにさらされている子どもや若者たちの現状に、深く心を痛めずにはいられませんでした。日本の子どもたちの幸福度の低さは、先進国中で最低ラインにあります。
また、子育て中のお父さん、お母さんたちも、経済不安や仕事のストレスと闘いながら、必死で家庭を守っています。子育て家庭に対する社会の援助の手は、はたして十分と言えるでしょうか。
競争と不安の強い社会を脱し、調和と生命の繋がりを取り戻せる社会へ。
ゆるやかに、舵を切っていきたいですね。
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